バイリンガルの人の脳の構造について

今月は良く聞く”バイリンガル”について考えてみたいと思います。海外で外国語を勉強したことがある人ならば、母国語が口から出てこなくなる体験をしたことがあるかもしれません。その体験こそ、バイリンガルになるための「頭の体操」だそうです。ある心理学者によれば、そうした言葉の選択が脳の認識機能を向上させるそうです。

国語スイッチ

心理学者、ジュディス・クロールはそう考えている。彼女はペンシルヴァニア州立大学で、バイリンガル能力とその認知的影響を研究している。「バイリンガルが操る2つの言語は、しばしば“競合”するものです」。クロールはワシントンDCで開かれたアメリカ科学振興協会のプレゼンテーションで語った。

「わたし自身の母国語は英語だが、スペイン語を話すときは、意識して認識のスイッチを切り替えなければならない。何年もの間、毎日スペイン語を話していてもそう感じる。」

しかし、スイッチを英語に切り替えるときにも、脳はまだ同じ作業をしているのだとクロールは言う。「特に外国語の環境にどっぷりつかっていると、母国語を見つけるのに一苦労する。

一瞬、パニックになるかもしれませんね。本気で第2言語を学習したければ、このパニックを克服しなくてはなりません。「第2言語を学習中、母国語は忘れやすくなるかもしれない。」彼女の実験結果によると、「母国語を忘れるといった学習初期に表れる影響を受けやすい人は、第2言語を習得する能力に優れているかもしれない。そして、話す単語1つひとつを選択するのは、脳が重量挙げをしているようなものなのかもれない。「lavadora」でなく「洗濯機(washing machine)」を選ぶたびに(逆の場合もそうだ)、わたしの脳は少し強くなるのだ。バイリンガルが常に直面するこのような負荷は、不要な情報をふるいにかけて決定を行う能力(実行機能)の向上につながる。(ちなみに、バイリンガルであることが実行機能に影響を与えるとは考えていない研究者もいる)言葉が「混ざる」のも、悪くはない。わたしはいまだに単語を選ぶたびに2つの言語から選んでおり、単に毎回同じ選択をしているわけではないのだ。ひとつの頭のなかに、別々に動く「1カ国語脳」が2つ入っているわけではない。それは、1つの「2カ国語脳」をもっているということなのだ。(Lizzie Wadeの著書)より一部抜粋。